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「100万円の布団押し売り」よりひどいぼくの「学費詐欺」

【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第二十八回

■布団2つでひゃ、ひゃくまんえん?

 問題は価格である。正確な金額は教えてくれなかったが、掛布団と敷布団のセットを、父と母の分2つで100万円ほどしたらしい。

「ひゃ、ひゃくまんえん!?」
「…………」
「一式50万円ってこと!?」

 おかあちゃんが腹立たしそうな表情になったので、それ以上の追及はやめた。

 救いは、悪徳詐欺に引っかかったわけではなさそうなことだろうか。客をセール会場のようなところに集め、集団催眠のごとくハイテンションにした上で、品質の悪い羽毛布団を高額で売りつける悪徳商法は聞いたことがある。その手の商品に比べれば品質は悪くないし、メーカーも名前が通っている。

 それに母が買ったのは2000年頃のようで、当時はまだ羽毛布団が高額だった。価格破壊が起こり、10万円を切る商品が珍しくなくなったのは比較的最近の話。掛布団と敷布団セットで50万円なら、おそろしく高額というほど法外な値段ではない。

 そんなふうに母をなぐさめて、気を鎮めてあげることにした。

 それでも、思い切って100万円を投じた商品と似た品物が、テレビショッピングで3万円で売られている事実を突きつけられると、そのたびにモヤモヤした気持ちがこみ上げてくるようだった。

 まったく。田舎のおじいちゃんおばあちゃんを半分だまくらかして、貴重な年金をつぎ込ませる悪徳商売の罪は重い。

 そう憤怒の炎に燃えつつ、しかし……と、逆に反省する。もっとずっとひどい詐欺にあってるんだよなあ、うちの両親は。

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夕暮 二郎

ゆうぐれ じろう

昭和37年生まれ。花火で有名な新潟県長岡市に育つ。フリーの編集者兼ライターとして活動し、両親の病気を受けて帰郷。6年間の介護生活を経験する。



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